失敗事例
2026年09月29日
失敗事例
査定額が一番高い会社を選んだら、なぜ売却が長期化したのか
「高く査定してくれた会社なら、高く売ってくれる」と考えるのは自然なことです。しかし、不動産会社が提示する「査定価格」と、実際に市場で買主が購入する「成約価格」は同じものではありません。今回は、査定額の高さだけで不動産会社を選んだ結果、売却期間が長くなり、途中で価格を見直すことになったという典型的な失敗パターンを整理します。
なお、この記事で紹介する事例は特定のお客様の実例ではありません。実務上起こりやすい複数のケースをもとに、判断の流れが分かるよう再構成したモデルケースです。
3社に査定を依頼したら、金額に大きな差が出た
例えば、所有しているマンションを売却するため、A社・B社・C社の3社へ査定を依頼したとします。
A社 3,780万円
B社 3,850万円
C社 4,380万円
この結果だけを見ると、C社に依頼したくなるかもしれません。A社とC社では600万円もの差があります。「同じ不動産なのに、どうしてこんなに違うの?」と疑問に感じるところですが、ここで最初に整理したいのは、不動産会社の査定価格は「その金額で必ず売れることを保証する価格」ではないということです。
国土交通省の標準媒介契約約款では、不動産会社が媒介価額について意見を述べる場合、その価格の根拠を示して説明することが定められています。つまり確認すべきなのは、査定額の数字だけではなく「なぜ、その価格なのか」です。
失敗の始まりは「4,380万円で売れる」と考えてしまったこと
モデルケースでは、売主は最も高い4,380万円を提示したC社へ売却を依頼しました。理由は「せっかく売るなら、一番高く査定してくれた会社がいい」というものです。
そして4,480万円で販売を開始しました。しかし、販売を始めても問い合わせが少なく、内見もほとんど入りません。1か月、2か月、3か月と時間だけが過ぎ、そこで初めて「価格を少し下げませんか」という話になります。
4,480万円から4,280万円へ、それでも反応が弱く、さらに3,980万円へ。最終的には、当初ほかの会社が提示していた査定価格に近い水準まで価格を調整することになりました。
ここで問題なのは、単に「値下げしたこと」ではありません。売却開始時に「査定価格」「売出価格」「周辺の成約価格」「現在販売中の競合物件」「売却希望時期」を分けて整理していなかったことです。
「売出価格」と「成約価格」は分けて考える
4,480万円で広告に掲載されている物件があったとしても、その物件が4,480万円で売れたとは限りません。販売中の価格は売主が希望している「売出価格」であり、実際に売買契約が成立した価格が「成約価格」です。
不動産価格を考えるときは、現在販売されている物件だけではなく、周辺で実際にどのような取引が行われているのかを確認する必要があります。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、不動産取引価格情報や成約価格情報などを確認できます。また、不動産価格は面積、前面道路などの個別条件や取引事情によって異なると説明されています。
つまり、「近くのマンションが4,500万円で売りに出ている」という情報だけでは判断材料として十分ではありません。その物件と自分の物件について、築年数、階数、向き、面積、間取り、管理状態、駅距離、室内状態などを比較していく必要があります。
査定額が高い会社が悪いわけではない
ここも誤解しないように整理しておきます。高い査定額を提示した不動産会社が悪い、という話ではありません。実際に高い価格で売却できる可能性もあります。
重要なのは「4,380万円です」という数字ではなく、「なぜ4,380万円なのか」を確認することです。比較するなら金額ではなく根拠まで比較します。
確認したいのは、どの成約事例を査定の根拠にしているか、現在販売中の競合物件はいくらか、自分の物件との違いをどう評価したか、その価格で販売した場合どのくらいの期間を想定しているか、反響が少なかった場合いつ販売方法を見直すのか、値下げを前提にした査定ではないか、といった点です。
査定額そのものを比較するより、この説明を比較した方が会社ごとの考え方が見えてきます。
査定額の数字だけでは判断しにくいときは
複数の査定結果が出て「どの価格を基準に考えればよいのか分からない」という段階でも大丈夫です。
売ることを急ぐ前に、価格の根拠、売却期間、周辺事例を一緒に整理できます。
売却価格を考える前に「いつまでに売りたいか」を整理する
同じ物件でも、売却する人によって適切な販売方法は変わります。「半年以上かかってもいいので、できるだけ高値を狙いたい」という人と、「住み替え先の決済があるので、3か月程度で売却したい」という人では、同じ販売計画にはなりません。
相続した空き家を売却する場合も、維持費を抑えたいのか、早く現金化したいのか、時間をかけても価格を優先するのかによって判断は変わります。
だからCollege Chronicleでは、最初から「この価格が正解」と決めるのではなく、「整理→比較→判断」という順番で考えます。
売り出してから反響がない場合も「すぐ値下げ」が正解とは限らない
問い合わせが少ない、内見がない、だからすぐ100万円下げる。この判断も、一度整理した方がよい場面です。
反響が弱い原因は価格だけとは限りません。掲載している写真、間取り図、物件説明、広告媒体、物件情報の見せ方、競合物件の増減など、確認する項目はいくつもあります。
価格を変更する前に、「価格の問題なのか」「見せ方の問題なのか」「そもそも問い合わせにつながる露出ができているのか」を切り分けます。
専任媒介契約では、不動産会社には一定頻度で売主へ業務処理状況を報告する仕組みがあり、国土交通省の標準専任媒介契約約款では2週間に1回以上の報告が定められています。また、指定流通機構への登録についても規定されています。
売主側も「問い合わせがありませんでした」だけで終わらせず、どのくらい閲覧されたのか、問い合わせは何件だったのか、内見後にどんな反応があったのか、競合物件に変化はあったのかなどを確認しておくと、次の判断がしやすくなります。
中古戸建てなら建物の状態も価格判断に関係する
中古戸建ての場合は、価格だけでなく建物の状態をどう整理するかも重要です。国土交通省では、中古住宅の取引時に建物の状態を把握するための「建物状況調査(インスペクション)」の活用を案内しています。
建物状況調査は、国の登録を受けた講習を修了した建築士が、国の基準に基づいて既存住宅の状態を調査する制度です。
すべての売却で必ず実施すべきという意味ではありません。建物の築年数、状態、売却方法、買主層などを整理したうえで、必要性を判断します。
失敗を防ぐために最初に確認したいこと
今回のケースで最初にやるべきだったのは、「一番高い査定額を選ぶこと」ではありませんでした。まず3社の査定根拠を整理し、次に周辺の成約事例と販売中物件を比較し、そして自分がいつまでに、どのくらいの価格で売りたいのかを整理する。そのうえで売出価格を判断する。この順番です。
査定額3,780万円と4,380万円のどちらが正しいかを、数字だけで決めることはできません。大切なのは、その数字がどのような情報から導き出されているのかです。
「売るかどうか」から整理しても大丈夫です
不動産相談は、売却すると決めてから行うものとは限りません。
「今売った方がいいのか」「価格だけ知りたい」「他社の査定結果を見てほしい」
という段階から、条件を一つずつ整理できます
高い査定額ではなく「説明できる査定」を選ぶ
今回の失敗事例から整理できるポイントはシンプルです。査定価格は売却を保証する価格ではなく、高い査定額を提示した会社を選ぶこと自体が間違いなのでもありません。
確認するべきなのは、なぜその査定価格なのか、どの成約事例を参考にしたのか、競合物件と何が違うのか、どのくらいの期間で売却する計画なのか、反響が弱かった場合何を基準に見直すのか、という「価格の後ろにある根拠」です。
不動産売却では、急いで答えを出す必要はありません。整理して、比較して、自分の条件に合った方法を判断する。College Chronicleでは、これからも成功談だけではなく、「なぜうまくいかなかったのか」という失敗事例も取り上げながら、不動産を判断するときに役立つ考え方を整理していきます。
不動産のことを、まず整理するところから
売却査定、住み替え、相続不動産、空き家など、不動産には一つの正解があるとは限りません。
株式会社Courageでは、結論を急ぐのではなく、状況、選択肢、判断材料を整理しながらご相談いただけます。
不動産売却で査定額に惑わされないためのQ&A
Q1. 不動産査定は一番高い金額を出した会社に売却を依頼すればいいですか?
A. 一番高い査定額を提示した会社が、必ず一番高く売却できるとは限りません。不動産会社が提示する査定価格は、その金額での成約を保証する価格ではないからです。このブログのモデルケースでは3社の査定額が3,780万円、3,850万円、4,380万円と最大600万円も開いています。この場合に比較したいのは金額だけではなく、どの成約事例を根拠にしたのか、現在の競合物件をどう評価したのか、物件の状態や立地をどう査定へ反映したのかという根拠です。「高い査定額」ではなく「なぜその査定額なのかを説明できるか」まで比較することが、不動産会社選びでは重要です。
Q2. 不動産の査定価格と売出価格、成約価格は何が違うのですか?
A. 査定価格、売出価格、成約価格はそれぞれ意味が違います。査定価格は不動産会社が物件や市場の情報をもとに算出した価格、売出価格は実際に市場へ物件を出すときの価格、成約価格は買主と売主が合意して売買契約が成立した価格です。例えば4,480万円で販売されている物件があっても、4,480万円で売れたことを意味しません。不動産価格を判断するときは、現在の売出物件だけではなく実際の成約事例を確認し、築年数、階数、向き、面積、間取り、管理状態、駅からの距離、室内状態など、自分の物件との条件差まで比較する必要があります。
Q3. 高い価格で売り出して、売れなければ値下げする方法ではダメですか?
A. 高値から販売を始める方法そのものが間違いとは限りませんが、売却希望時期と販売計画を決めずに始めると長期化する可能性があります。このブログのモデルケースでは4,480万円で販売を開始したものの反響が少なく、その後4,280万円、さらに3,980万円へ価格を調整しています。重要なのは最初から値下げを避けることではなく、いつまでに売りたいのか、その価格でどの程度の販売期間を想定するのか、反響が弱ければいつ何を見直すのかを事前に整理することです。半年以上かけて価格を優先する売主と、住み替えなどで3か月程度の売却を希望する売主では、適切な販売計画も変わります。
Q4. 売り出した不動産に問い合わせや内見がない場合、すぐ値下げした方がいいですか?
A. 問い合わせや内見が少ないからといって、原因が価格だけとは限りません。値下げを決める前に、掲載写真、間取り図、物件説明、広告媒体、物件情報の見せ方、競合物件の増減、そもそも十分な露出ができているかを確認する必要があります。専任媒介契約では一定頻度で業務処理状況を売主へ報告する仕組みがあるため、「問い合わせがありませんでした」で終わらせず、閲覧状況、問い合わせ件数、内見後の反応、競合物件の変化などを確認すると次の判断につながります。価格を変更する前に「価格」「見せ方」「露出」のどこに問題があるのかを切り分けることが重要です。
Q5. 不動産売却で失敗しないために査定時に何を確認すればいいですか?
A. 査定額そのものより、その数字がどのような情報から導かれたのかを確認することが重要です。具体的には、査定の根拠にした成約事例、現在販売されている競合物件、自分の物件との条件差、その価格で販売した場合に想定する売却期間、反響が少なかった場合の見直し時期や方法を確認します。そのうえで自分自身も「いつまでに売りたいのか」「価格と売却期間のどちらを優先するのか」を整理します。複数社へ査定を依頼した場合も、査定額だけを並べるのではなく説明と販売戦略まで比較することで、自分の条件に合った売却方法を判断しやすくなります。
高い査定額に迷ったら、根拠を整理して納得できる売却判断を
高い査定額を選ぶことが問題なのではありません。重要なのは、その価格を説明できる根拠があるかどうかです。
成約事例、競合物件、売却希望時期、販売戦略を整理したうえで、自分に合った売却方法を判断することが、後悔を減らす第一歩です。
住まいは、知らないまま決めるものではなく、理解したうえで選ぶものです。
その違いが、未来の後悔を減らします。
株式会社Courageは、
条件だけでなく、街の空気やこれからの時間まで含めて考えます。
街と人が重なり合うとき、そこに暮らしが生まれます。
まずは、現在の不動産の売却相場を把握し、
売却か保有かの判断材料にしてみてください。
株式会社Courage公式ブログ
『College Chronicle』
Courage不動産のホンネと裏話
Courage猫神話(キャラクター紹介)はこちら
https://www.corporation-courage.co.jp/CourageCatMythology/
次回テーマ
『売却分析』
2026年10月2日 配信予定
どうぞお楽しみに。
売買・賃貸・投資・買取まで一括対応
IT×不動産の実務会社
私たちの日々の考察は、こちらから。
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※本記事内の価格・期間・コスト等の数値は参考例であり、実際の条件は物件ごとに異なります。
参照資料
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
不動産取引価格、成約価格、地価公示等の情報を公開。
国土交通省「不動産情報ライブラリ 制度と用語」
不動産取引価格情報の公表方法、不動産価格が個別条件や取引事情によって異なること等を確認。
国土交通省「標準媒介契約約款」
媒介価額について宅地建物取引業者が意見を述べる場合の根拠説明、業務処理状況の報告等を確認。
国土交通省「宅地建物取引業法関係」
標準媒介契約約款等の掲載情報を確認。
国土交通省「既存住宅流通について 建物状況調査(インスペクション)活用に向けて」
建物状況調査制度および中古住宅取引における活用について確認。
